熊本地方裁判所 昭和53年(行ウ)7号 判決 1984年2月27日
原告 破産者内村健一
訴訟承継人破産管財人 福田政雄 ほか二名
被告 熊本西税務署長
代理人 有本恒夫 亀谷和男 辻井治 公文勝武 横内英夫 大村弘一 ほか四名
主文
被告が内村健一に対して昭和五一年三月一一日付でなした内村健一の昭和四七年分の所得税についての更正を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
主文同旨
二 請求の趣旨に対する答弁
原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 被告は内村健一に対し、同人の昭和四七年分の所得税につき、昭和四七年五月二〇日、人格なき社団である天下一家の会・第一相互経済研究所(以下「天下一家・第一相研」ともいう。)が成立し、内村健一が右に対しその基本財産目録に掲げられた資産を贈与し、内村健一がこの贈与により譲渡所得を得たとして、別紙(一)記載のとおり所得税の更正(以下「本件更正」という。)をした。
内村健一は本件更正につき熊本国税局長に対し異議申立てをしたが、同局長は決定をしないまま三か月を経過し、審査請求できる旨を教示したので、内村健一は別紙(一)の審査請求欄記載の日に国税不服審判所長に審査請求をしたが、いまだ裁決がない。
2 本件更正には次のとおり違法事由がある。
内村健一は昭和四二年四月頃から無限連鎖講(一定金額の金銭を支出する加入者が無限に増加するものであるとして、先に加入した者が先順位者、以下これに連鎖して段階的に二以上の倍率をもつて増加する後続の加入者がそれぞれの段階に応じた後順位者となり、順次先順位者が後順位者の支出する金銭から自己の支出した額を上回る額の金銭を受領することを内容とする金銭配当組織。いわゆるネズミ講)を主宰しているが、昭和四五年頃までは第一相互経済研究所(以下「第一相研」ともいう。)、同四六年頃からは天下一家・第一相研という名称を用い、これらはすべて自己と同体異名だと称していた。
昭和四七年五月二〇日、天下一家・第一相研の定款が作成され、社団としての体裁が整えられたがその実体は、依然内村健一個人と目すべきものである。
このように、昭和五七年五月二〇日以降においても、天下一家・第一相研の実体が内村健一個人と同一視されるべきもので、その社団性を否定すべきものであるとすれば、本件においては、右時点において前記1記載の資産の譲渡があつたとみることはできないから、本件更正はこの点の事実を誤認したものである。
3 内村健一は、昭和五五年二月二〇日午後二時破産宣告を受け、原告らはその破産管財人である。
二 請求原因に対する認否
1 同1の事実を認める。
2 同2の事実について
内村健一が昭和四七年五月一九日まで無限連鎖講を主宰し、その際第一相研、天下一家・第一相研の名称を用いていたことを認め、その余は争う。
三 被告の主張
1 本件更正に至る経緯
(一) 内村健一は、昭和四二年三月から昭和四七年五月一九日までの間に第一相研の名をもつて、順次「親しき友の会」、「第一相互経済協力会」、「交通安全マイハウス友の会」及び「中小企業相互経済協力会」なる無限連鎖講を開設してこれを運営し、これらの事業を主宰していた。
(二) 内村健一の営んでいた右無限連鎖講に係る事業は、昭和四七年五月二〇日に人格なき社団たる天下一家・第一相研が発足したことに伴い、天下一家・第一相研がこれを引継ぎ、同日以後は右無限連鎖講に係る事業を主宰することとなつた。内村健一は、右同日、右事業を引き継ぐにあたり、同人所有の資産を天下一家・第一住研に対し、贈与した。
(三) 本件更正は内村健一から天下一家・第一相研への資産贈与に係る譲渡所得につき、所得税法(昭和四八年法律第八号による改正前のもの)五九条一項一号の規定に基づき時価に相当する金額によりこれらの資産の譲渡があつたものとみなしてなされたものである。
2 人格なき社団について
(一) 民法上人格なき社団といい得るためには、「団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることを要する。」(最高裁第一小法廷判決昭和三九年一〇月一五日民集一八巻八号一六七一頁)と解されているが、右要件を現実の具体的事案にあてはめるには、その事案の内容(社団内部の紛争か、社団の対外関係に関するものか、どのような法的効果の発生が求められているか等)に応じ、各要件の持つ意味内容を吟味しその適用を考えるべきである。
(二) 一般私法上「人格なき社団」を認める法的効果について
社会に存在する人的結合体(団体)が人格なき社団として認められるためには、それが社会通念上組織的単一体として独立性を有するものでなければならない。そのためには、民法の社団法人に準じ、まずその構成員が存在して一定の根本組織を定め、これによつて目的遂行のための意思決定や業務の執行をなしうる実体を備え、自然人と同様に社会的作用ないし活動を営みうるものと認められるものであることを要する。
現実の社会にみられる団体を人格なき社団として認めるということは、法的効果の面からみれば、社団代表者を通じて社団の名において行う法律行為の実質上の帰属点という法的効果を認めることにほかならない。
(三) 税法上の「人格なき社団」を認める要件について
法人税法及び相続税法が「人格なき社団」につき納税義務を認めた趣旨は、「構成員らとは別個に当該団体がそれ自身において社会生活上の一単位として活動しており、その性質、組織、活動状況において法人格を有する社団や財団と異なるところがないとすれば、租税法規がその目的を達するうえで人格なき社団に租税法律関係の当事者たる地位を認めるのに差し支えない。」というところにあるから、人格なき社団を租税法律関係の当事者たる納税義務者の地位に据えるには、当該団体に団体の構成員の財産から明確に分離された団体固有の財産の存することが必須かつ、最重要であり、構成員の資格・範囲・権利義務、社団の目的、執行機関の構成、執行機関の監督手段等は、元来、団体の内部関係に属する事柄であるから、専ら当該団体の自治に委ねられるべき問題であり、形式的に備わつておれば足りるというべきである。
更には、申告納税方式を採る税法の下においては、当該団体が自ら人格なき社団と認識してその帰属財産の範囲を明確にし、その旨を構成員に対して公示し、その財産の管理、運営を執行機関に委ね、かつ、人格なき社団の名において納税申告を行つており、一方代表者又はその財産の出捐者においても右財産が代表者又は出捐者個人の財産とは分離された社団財産と認識している場合には、財産の混淆を生ずる特段の事情が認められない限り、たやすく右団体の人格なき社団性を否定することは許されない。
(四) また仮に、天下一家・第一相研が内村健一の経済目的達成のための手段として形式上設立されたもので、その実質は昭和四七年五月二〇日以降も変化なく、内村健一が無限連鎖講に係る事業を主宰していたとしても、原告らが、同日以降本件事業の主宰者は内村健一であることを主張することは許されない。その理由は以下のとおりである。
(1) 内村健一は、後記3記載のとおり自らが中心となり、社団を成立させたと認め得るような外観を作り出したほか、被告に対し、昭和四七年七月四日付けで天下一家・第一相研名義の給与支払事務所等の開設届出書を提出するとともに、従来の第一相研内村健一名義の給与支払事務所等が同年五月一九日付けで廃止された旨の届出書を提出し、同年同月二〇日以降の収益について、天下一家・第一相研が人格なき社団として法人税確定申告書を提出している。
(2) 右のような経緯からすれば、天下一家・第一相研につき人格なき社団という法的形態を利用した内村健一は、被告に対し、天下一家・第一相研が人格なき社団ではないという論拠で既に生じた租税法上の責任の回避を主張することは、信義則、権利濫用の法理、禁反言の法理、法人格否認の法理の趣旨に照らし許されず、従つて、その破産管財人である原告らも右同様の主張をすることは許されないというべきである。
3 天下一家・第一相研の社団性
昭和四七年五月二〇日、天下一家・第一相研は人格なき社団として成立した。
すなわち、昭和四六年八月頃から天下一家・第一相研の代表者である内村健一を中心に有力会員等との間で社団設立の動きが具体化し、同四七年一月二七日に第一回発起人会が次いで、同年五月一一日第二回の発起人会が開催され、天下一家・第一相研定款案の承認、役員となるべき者の選定、設立総会の開催期日などが決定され、同年同月二〇日創立会員総会が開催され、定款の承認、役員の選任、基本財産の承認、事業予算の承認などの各決議がなされたが、その定款には、その名称、目的、会員資格の得喪その他民法三七条に規定された社団法人が具備すべき定款の記載事項の全てが記載されている。そして天下一家・第一相研の対内的独立性についていえば、天下一家・第一相研が構成員とは別個独立の存在であることはその定款上も明らかであり、天下一家・第一相研の財産的独立性についていえば、その固有財産を分別経理し、かつ原告の構成員に対し会計報告書等を通じてこれを公示しているのみならず、天下一家・第一相研は、その代表者である内村健一の固有財産と天下一家・第一相研の固有財産との分別について利害と関心を有しており、天下一家・第一相研の対外的独立性についていえば、天下一家・第一相研は社団を代表し業務を執行する機関として会長、副会長、理事、監事の職を定め、内村健一が会長となつてその業務を執行しているのであつて、天下一家・第一相研の内部組織性についても、天下一家・第一相研には定款により社団の意思決定機関として会員総会が、社団の業務執行の決定機関として理事会がおかれ、これらの決定機関において社団の重要事項が承認決定されているのである。
四 被告の主張に対する認否及び原告らの反論
1 被告の主張1に対し、(一)及び(三)の事実を認め、(二)の事実は否認する。
2 同2の主張を争う。
(一) 人格なき社団につき税法上特別の概念があるわけでなく、講学上民法で論じられているのとは別に、税法上独自の意味を持たせることは許されない。
(二) 信義則または禁反言の法理等の適用は本件には妥当しない。
(1) 原告らは研産者内村健一の主張に拘束されない。
破産管財人はその職責上破産者個人の従前の言動に反する主張立証ができることは当然であり、否認権を行使して破産者の従前の行為を否定し、根底から覆すことさえできる。
更に、本件破産宣告決定は、本件講による事業を営むものは内村健一個人ではなく、人格なき社団たる天下一家・第一相研であるとの内村健一の主張を否定してなされたものであり、原告らはその前提のうえでの破産管財人である。
したがつて原告らは当然内村健一個人の右主張を否認して、その職務を遂行しなければならないのである。
(2) 税法上の信義則違反、禁反言の原則等の適用は考慮の余地がない。
税法上信義則違反が認められるのは、租税法律主義を貫徹すると却つて衡平に反し、不正義の結果が生ずると思われる場合であるが、本件の場合はこれに該当しない。
3 被告は天下一家・第一相研の社団性につきその形骸だけを見、その成立過程や実態を何ら検討していない。
これが人格なき社団とは認めがたいこと以下詳述するとおりである。
(一)昭和四七年五月二〇日の創立総会について
社団の創立総会という以上は、その構成員全員に対し、総会においてその意思を反映する機会が与えられ、かつ、その意思が多数決の原則によつて決せられるものでなくてはならない。
(1) 社団の構成員としての会員資格が不明確である。
(イ) 天下一家・第一相研の定款(以下単に「定款」という。)七条によれば、いわゆるネズミ講に加入した者総てが会員となるものと思われる。他方、入会時に交付される会員証には、有効期間一年との記載がある。
更に定款七条二項は、会員となつた者は、年一回以上同一組織に再加入しなければならないと定めるが、再加入しなかつた場合についての規定は存在しない。
(ロ) 定款八条は会員資格を失う場合として死亡・退会・除名を定めるが会員死亡の場合の取扱いについては幹部もわかつていない。
また退会の申し出があれば会員資格を喪失するはずであるが、幹部は退会はなかつた旨証言し、原告らの調査によつても退会者は一人も発見できなかつた。
(2) 社団の創立総会の開催につき会員となるべき者に対し、出席の機会または、会員を代表して出席する者を選任する機会が与えられていない。本件創立総会は、昭和四二年三月以来、第一相研の主宰する無限連鎖講加入者に対する通知、公告なくして開催されたものである。
(3) 総会における会員代表の選出方法が一定せず、構成員の意思が反映されていない。
創立総会は、全国の会員から選出された代表により開催されたというが、会員代表の選出方法につき定款一五条は、各支部において選出される旨規定するのみであつて、具体的な選出方法は定められていない。
創立総会には、支部単位で開催された県大会で推薦等により選出された会員代表一四〇名中九四名(内委任状提出者五四名)、支部外会員代表六名(いかなる方法により選出されたか不明)が出席しているが、昭和四七年当時、支部が存在したのは青森、秋田、山形等数県のみであり、大部分の県には支部がなかつたのであり、その地方の会員は自らの意思を総会に反映させる機会すら与えられなかつた。
(4) 役員(会長、理事)の選任につき多数決の原則が行われていない。
定款二〇条は、内村健一は終身理事であり会長である旨規定し、他の会員は会長となることも、内村健一を更迭することもできないほか、同条二項によれば理事の三分の一は会長が指名して選任することとされ、いずれも構成員の意思は排除され多数決の原則は否定されている。
(二) 創立総会後の総会の運営について
創立総会後の通常総会すら会員に対する通知、公告なしに開催され、構成員の意思が反映されているとはいい難い。
また会員代表の選出方法は以下のとおり違法なものであつた。
(1) 昭和四八年一月二三日の理事会で会員代表の選出方法につき、対象を昭和四六年六月五日の国税庁の内村健一に対する査察以後の入会者に限る、県支部のないところは隣接県支部が担当して代表を定める、会員代表総数を一二〇名とする旨決定された。
各講の入会口数をみるに、右査察以後の講入会口数は、昭和四七年一二月三一日当時の講入会口数の三・九一パーセントにすぎない。
(2) 昭和四八年一月末当時の支部は未活動の沖縄支部を除き一三、会員代表数は一一五名(二府一八県)であり、このうち県支部の設置されていない県からの会員代表が一一名(七県)存在した。
(三) 天下一家・第一相研の資産の管理運営は内村健一が公私混同の状態で行つていた。
昭和四七年一〇月二八日経理規程が制定されたが定款に定める基本財産と通常財産の区分は明らかでなく、貸借対照表は作成されず、収支計算書によつても事業成績は不明確であつた。
(四) 支部の設置、廃止について
(1) 定款、支部運営規則、支部認可審査に関する規定によると支部は必要に応じ理事会に附議して設け、その下部組織として地区支部、連絡事務所を置くとされているが、長崎県支部、北海道支部については理事会に附議されていない。
(2) 右長崎、北海道を含め支部は二一を数えるのみで、県支部のない県が全国で半数以上を占めた。
これら支部の中には支部としての実態がないものもあつた。
(3) 支部運営規則四条によれば、支部の管轄区域は原則として都道府県の行政管轄区域、ただし理事会の決定で支部の設置されていない隣接都道府県の全部もしくは一部を管轄するとあるが、理事会で県支部のない県の管轄支部を定めたことはなく、また管轄支部は秋田、山形等特定支部に限られ、その管轄区域も遠隔地にある等、会員と支部の連絡は不充分であつた。
(五) 天下一家・第一相研の消滅
天下一家・第一相研は内村健一の事業廃止、破産と同時に消滅した。
(1) 天下一家・第一相研の目的は要するに定款七条一項に掲げるとおり、講に加入した者を会員とし、ネズミ講の加入者を増加させるところにあつたことは否定できない。このネズミ講は無限連鎖講の防止に関する法律の成立により、昭和五四年五月一一日からこれを主宰し勧誘したり、加入することができなくなり、この会の目的は消滅した。そこで天下一家・第一相研は、同年四月一一日の定時総会で右講の停止宣言をし、活動の方向転換を図ることとなつたが、企画倒れとなり正式な発足もできないうち、内村健一が破産宣告をうけ、天下一家・第一相研は自滅した。
(2) 組織の崩壊
内村健一も昭和五四年夏頃から会長名を使用しての活動をしなくなつたが、同五五年二月二〇日の破産宣告以来、全く会長名を使用しなくなつた。総会も昭和五四年四月一一日を最後に開催されず、理事会も同年七月五日を最後に開催されなくなつた。
(3) 事務所の閉鎖
内村健一の居住する熊本市本山町六三五番地内にあつた事務所も全職員を解雇して看板が下ろされ、昭和五四年八月末日には閉鎖された。
(4) 財産の消失
昭和五二年頃、天下一家・第一相研の資産は本部所在地の宅地やビルのほか全国各地二二か所に保養所等の土地建物、国債や預貯金等、時価にして数百億円といわれていたが昭和五四年三月三一日の決算期には次年度繰越金はわずか二二億円にすぎなかつた。
五 被告の再反論
1 創立総会について
(一) 原告らの主張は、設立時における社団構成員が講会員の全員であることを前提とするものであるが、社団の成立を認めるにあたつてこのような前提を置かねばならぬ理由はない。
(1) 昭和四七年五月二〇日の創立総会には、あらかじめ発起人会が定めた会員代表の定数(一四〇名)に基づき、支部において選出された会員代表九四名(委任状出席を含む。)及び支部外会員代表三名、本部からの会員一八名がそれぞれ出席したものであり、右総会出席者及びその選出母体となつた支部会員のみをもつてしても、人格なき社団の成立を認めるに足る構成員数を満たしている。
一人の講会員が複数の講に重複して、又は一つの講に数口加入することがあり得るのであるから、講加入口数と会員数は必ずしも一致せず、更に天下一家・第一相研のように講加入口数の拡大とともに社団構成員の増加する開放的社団にあつては、まず発起人と趣旨に賛同する者により人格なき社団が創立され、順次その規模を拡大していくこともある。
(2) 天下一家・第一相研の構成員資格の得喪については不明確なところもあるが、定款七条一項は講加入者であることを社団構成員の資格要件とし、天下一家・第一相研の目的に賛同する講加入者をもつて構成員とする旨定めたものと解し得るし、同条二項は講加入の手続を、同条三項は構成員の義務をそれぞれ定めたものと解される。右条項は、社団の構成員の範囲が講加入者全員に拡大されることを標榜しつつ、必ずしも講加入者と構成員の範囲が一致するものでないことを前提として定められているのであり、社団構成員たる地位を失つても、講会員として後輩会員から贈与金を受領し得る地位は失わないものと考えられ、名義変更(講会員たる地位の譲渡、相続)が行われる場合があることも異とするに足りない。
また会員証には一か年の期限の記載があるが、これが社団構成員資格とかかわるか否かは社団内部の自治の問題である。この点につき天下一家・第一相研では、右会員証の期限は保養施設の無償利用、交通事故見舞金受給等の恩典の期間制限である旨説明しており、また構成員の唯一の義務である年一回の講加入を怠つたとしても、これにより当然に構成員資格を失うものではないと説明している。
(二) 創立総会開催当時第一相研の講会員は各都道府県に均等に存在していたのではなく、九州地方や東北地方に偏在していたのであり、しかもこれら各県において有力会員を中心として自然発生的に団体化してきた県支部を母体として人格なき社団としての天下一家・第一相研が設立されたのであり、各都道府県に存在する全講会員がその創立に参画していなくとも社団の成立が否定されるものではない。
(三) 創立総会において承認、制定された定款は事前に発起人会で審議され、総会開会通知とともに各支部に通知されていただけでなく、総会後には天下一家・第一相研の会報「天下一家ニユース広報」に掲載され、この会報は各支部又は有力会員を通じて講会員に配布されたほか、新規講加入者に二部ずつ配布された。また昭和四七年五月二〇日以降講に加入した者に対しては、会員証とともに定款のみを別刷にしたパンフレツトが郵送され、講会員に周知させる方法がとられていただけでなく、会計年度ごとに作成する事業報告書にも定款が掲載され、会員総会に出席した会員代表に配付されたほか、各支部、各普及員連絡所及び各地の保養所に配置された。
(四) 天下一家・第一相研の業務執行横関の構成は、一般の社団に比し異例のものではあるが、これも社団内部の自治の問題である。
2 会員代表の総会出席について
委任状による出席は実際上多くの団体において慣行として認められており、団体法理において特にこれを否定すべき理由はなく、当該社団においてこれを容認すべきでない特段の事情があれば、定款その他により、容認しない旨定めれば足り、要するに社団の自治の問題である。
3 天下一家・第一相研の運営について
会員総会又は理事会によつて決議された事業計画及び予算案に従つて行われ、理事会には、地方の理事も出席して発言し、ことに研修保養所の設置、支部及び連絡事務所の設置については、地方の理事からの発案によるものが多く、内村健一がすべて決断し運営していたものではない。
4 天下一家・第一相研は、昭和四七年五月二〇日成立後現実に事業活動を継続していたのであり、同五四年五月一一日無限連鎖講の防止に関する法律の施行を目前に控えた同年四月一一日会員総会において無限連鎖講にかかわる事業の終結を宣言し、更に同五五年二月二〇日内村健一に対する破産宣告の決定があつたため、社団としての事業活動を閉止したにすぎず、天下一家・第一相研は解散の手続きを経ていないし、額の大小を問わず社団財産が残存している以上、社団としての存在を失うものではない。
第三証拠 <略>
理由
一 内村健一が、昭和四二年三月から昭和四七年五月一九日までの間に第一相研の名をもつて順次「親しき友の会」、「第一相互経済協力会」、「交通安全マイハウス友の会」、「中小企業相互経済協力会」なる無限連鎖講を開設してこれを運営し、これらの事業を主宰していたこと、及び請求原因1の事実は当事者間に争いがなく、同3の事実は当裁判所に顕著である。
二 本件の争点は、昭和四七年五月二〇日天下一家・第一相研が人格なき社団として成立し、内村健一と別人格を有するに至つたか否かであるのでこの点につき判断する。
1 <証拠略>によれば次の事実が認められ、これに反する証拠はない。
(一) 内村健一は、かねてから定款を作成して第一相研を組織的に整備しようと企図していたところ、昭和四七年五月一一日、別紙(二)記載の定款を作成し、同月二〇日、創立総会においてその承認を得て、定款に従つて第一相研の機構も一応整備され、名称も天下一家の会・第一相互経済研究所と改められた。
(二) その後前記各講と同種の無限連鎖講として「花の輪Aコース」「同Bコース」「同Cコース」のほか「洗心協力会」(以下「親しき友の会」から「洗心協力会」までを一括して「本件各講」という。)が立案実施され、昭和四八会計年度までは事業報告書、昭和四九会計年度以降は事業概要を作成してその事業内容、収支状況を公表するようになつた。
(三) また、ほぼ定期的に理事会(天下一家・第一相研の役員である理事によつて構成される執行機関)が開催され、支部(天下一家・第一相研の事業運営上必要に応じて設けられる本部の下部組織。原則としてその所在地の都道府県の行政管轄地域を管轄する。)の設置など定款に定められた事項などにつき決定し、定款に基づき各支部において選出された会員代表により構成された会員総会も開催されているが、支部の数は昭和五二年五月の時点で一八を数えるのみであつた。
2 1で認定したとおり天下一家・第一相研は昭和四七年五月二〇日以降、形式上社団らしき定款と組織機構を備えるようになつたが、社団性を認めるには次のとおり根本的な疑問があり、天下一家・第一相研は内村健一が本件各講を運営するに際しての別称にすぎないというべきである。
3 人格なき社団の成立は「団体としての組織を備え、多数決の原則が行われ、構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定している」か否かによつて判断すべきである(最高裁第一小法廷判決昭和三九年一〇月一五日、民集一八巻八号一六七一頁参照)が、その判断に際しては、内側に向つては複数人の集合により成立するある程度の人的まとまりがあること、外側に向つては、集合を構成するメンバーが閉鎖的であること、換言すれば、構成員資格の明確化と限定により、非構成員から明確に区別しうる、対内的にはまとまりを、対外的には閉鎖性を有する人の集まりである所謂団体そのものが存在することが基本的出発点となる。
つまり当該構成員の集団である団体につき、構成員資格が明確になつて始めて団体としての組織の具備、その他団体として主要な点が確定しているか否かにつき判断を進めるのが論理的である。
そして、結論を先にいえば、以下述べるとおり、天下一家・第一相研はその構成員(以下「会員」という。)の資格が不明確であつて会員の集まりとしての団体そのものの存在を観念できないのであり、基本的出発点が曖昧であつて、そもそも社団としての実質を具備していないものと言わざるを得ない。
(一) 前記定款(以下、定款を引用する際には条項のみで示す。)は、第二章会員の章で七条(資格)、八条(資格の喪失)の二か条をもつているところ、その七条一項では、「本会の目的に賛同し、本会の立案育成する相互扶助の組織に加入したものを会員とする。」と定め、(本会とは「天下一家の会・第一相互経済研究所」を指し、相互扶助の組織とは本件各講を指すものと解される。)、八条では会員資格の喪失事由として死亡、退会の申出、除名のみを掲げており、右によれば天下一家・第一相研の主宰する本件各講に入会した者は八条所定の事由が生じないかぎり、会員資格を喪失することはないと考えられる。
ところが七条三項は「会員となつた者は毎年一回以上同一組織に加入するものとする。」と規定し、一年内に再加入しなかつた場合も会員たる資格を喪失するようにも読め、また定款作成以前に本件各講に入会した者が天下一家・第一相研の会員であるか否かにつき定款上どう解釈すべきか判然としない(七条一項によれば、これらの者も当然会員となるようでもあるが、同条二項によれば、そうでないようでもある。)など、定款上会員資格が一義的でなく不明瞭であるうえ、<証拠略>によれば、天下一家・第一相研の会員証には有効期間として一年間の期限が付され、また「見舞金」なる給付金の受領権及び「研修保養所」なる施設の無料利用権も一年間と限定されていることが認められるところから、七条三項の規定と相俟つて、会員資格は一年間に限られるとも解されるが、逆に本件各講の仕組自体からいえば、会員は後順位者から予定の満額を受領するまで年限に関係なく会員であるとも考えられるなど、会員の資格範囲が極めて不明確な状態にある。
(二) 右(一)に述べたような状態を反映して、以下述べるとおり会員資格の得喪について現実の運用、あるいは天下一家・第一相研の役員たる理事の理解も一義的ではなかつた。
<証拠略>によれば、前記各事件において天下一家・第一相研の会長内村健一は「定款作成前も作成後も会員は同じであり、講の仕組からいけば満額を受領するまで会員資格がある。定款作成後は七条三項があるので原則として一年たつて会員証の期限、見舞金制度がきれるころまた入るということをしている。会員の中には猫もおり、とりたてて問題にはしていない。会をやめたい場合はいわゆる名義変更(会員資格の譲渡)の手続をとり、会員が死亡した場合後続会員がない限り無限連鎖講はそこでストツプする。」旨を天下一家・第一相研の理事で副会長の地位にある中谷正次郎は、「無限連鎖講に加入した者は、会員名簿に名前がある限り(名義変更手続をとるか、死亡する以外は)、天下一家・第一相研の会員である。七条三項の規定は、定款作成前の無限連鎖講加入者には適用がない。」旨を、天下一家・第一相研の理事であり、山形県支部長でもある加藤優は、「ある講に入会すれば自動的に会員となり、満額を受け取つても天下一家・第一相研が存続する限り会員である。」旨を、同じく天下一家・第一相研の理事である小清水忠男は、「会員は(無限連鎖講が)完結するまで資格があるが、一応反覆するという形をとる。総会出席資格、保養所の利用資格が一年である。会員死亡の場合後続会員がいる場合は名義変更ができないか、後続会員がない場合は当該会員の相続人に名義変更できる。」旨を、同じく天下一家・第一相研の理事である高谷稔は、「名義変更制度は後続会員ができないため退会したい場合のためできた。本件各講に加入した者は満額を受けとつて講の仕組から抜けても、八条の資格喪失事由が生じない限り会員資格を失わない。」旨を、天下一家・第一相研に勤務して常務の経験者である緒方敬弘は「会員は永遠であり、後続会員がいないうちに死亡した例は余りなかつたが、死亡会員の子供は相続が可能で、手続としては名義変更によることになる。」旨を、天下一家・第一相研のマイハウス担当部長である本田明登は「会員証に期限が記入されているが、右期限が過ぎても会員である。」旨を、また長野県在住の会員である西隆史は「満額を受領するまで会員であるものと考えており、また入会時に再入会についての説明はなかつた。」旨を、それぞれの事件の法廷で供述していることが認められ、右事実によれば、天下一家・第一相研の役員相互間にも会員資格について統一的な見解はなく、また現実の運用も一義的でなく、構成員の範囲を明確にすることは困難であつたという他はない。
(三) 更には<証拠略>によれば、会員資格に関する大蔵事務官の質問(いずれも昭和五八年になされている。)に対し、前記加藤優は「各講への入会金を納入すれば会員となるのであり再加入しなくても会員資格に影響はなく、七条三項は再加入か望ましいとの意味にすぎない。資格喪失事由は八条に定める死亡、退会、除名のみであるが退会を届出たものはなかつた。」旨を、天下一家・第一相研の監事で、山形県副支部長でもある橋本繁雄は「入会金を納入すれば会員となり八条に定める以外、資格喪失事由はなく、七条三項は満額を受領してもそのままにせず再入会して欲しいとの意味であり、退会、除名の例はなかつた。」旨を、前記高谷稔は「満額を受け取るまでは会員であり、再加入しなくても会員資格に影響はない、会員が死亡した場合は名義変更により会員の家族が会員資格を受け継ぐと思う。」旨を、天下一家・第一相研の理事で秋田県支部長でもある鈴木慶司は「再加入しなくとも会員であることにかわりなく、加入者は満額を受けとるまで会員である。会員の死亡、退会の場合は後続者を各自が自由に決める仕組であり、除名の場合は支部長の職責として後継者を決めなければならないとされていた。」旨を、それぞれ供述していることが認められ、右事実によれば定款作成後一〇年を経過した昭和五八年に至つてもなお会員資格の得喪について不明確な部分(例えば会員死亡の場合)があるものと認められる。
右に述べたとおり、天下一家・第一相研の会員資格の得喪については定款上一義的でなく、また本件各講の仕組との関係も不明確であるうえ、天下一家・第一相研の役員相互間にも統一的な見解があるわけではなく、またその運用についても明確な基準がなく、天下一家・第一相研の構成員の範囲を客観的に明らかにすることはできず、従つて、天下一家・第一相研をその非構成員から区別された構成員の集団である団体として把えることは不可能と言わざるを得ない。
してみるならば天下一家・第一相研は人格なき社団の前記成立要件適用の基本的出発点をそもそも欠いているのであつてその余の成立要件につき判断を加えるまでもなく人格なき社団としての評価に耐え得ないものである。
従つて昭和四七年五月二〇日、天下一家・第一相研が人格なき社団として成立し、その基本財産目録に掲げられた資産を内村健一から贈与を受けたものとしてなされた本件更正処分には事実誤認の違法があつて取消しを免れないものである。
三 なお、被告はある団体が人格なき社団といいうるかどうかは、事案の内容に応じ相対的に解決さるべきであつて、本件のような実質上は社団の対外関係の訴訟と目すべきものにおいては、意思決定の方法、代表者の選出について社団の内部規則として定められ、これが客観的に認識できれば十分であり、特に人格なき社団を租税法律関係の当事者たる納税者の地位に据えるには、当該団体に、団体の構成員の財産から明確に分離された団体固有の財産の存することが必須かつ最重要であり、申告納税方式下においては、当該団体が自ら人格なき社団と認識してその帰属財産の範囲を内外に公示し、その財産の管理、運営を執行機関に委ね、かつ、人格なき社団の名において納税申告を行つており、一方、代表者又はその財産の出捐者においても、右財産を当該個人の財産とは分離された社団財産と認識している場合には、財産の混淆を生ずる特段の事情が認められない限り、たやすく右団体の人格なき社団性を否定することはできない旨主張する。
しかし、ある団体が人格なき社団といいうるか否かは、こと実体法上は権利能力の有無に関わる根本的な問題であり、手続法上は当事者能力の有無にかかわる入口の問題であるから、実体法・手続法上統一的に理解することが法的安定のためにも不可決の要請であると解すべきであり、この理は、租税法律関係に関する実体法・手続法の問題に関してもあてはまると解するのが相当であつて、被告主張のように、租税法律関係か否かによつて別異に(相対的に)解することは、当裁判所の組しないところである。確かに、財産の分離、分別や当該団体構成員の意識が、当該団体が人格なき社団といいうるか否かについて一つの判断要素たりうることは否定しえない重要事項であるが、社団の構成員の資格の得喪という社団の基本的出発的が曖昧であれば、そもそも社団の構成員を客観的に確定しえないのであるから、人格なき社団たりうる他の要件を詮索する理由も必要もないところ、本件は正に右資格の得喪が曖眛であることは前記したとおりであるから、結局被告の右主張は採用の限りでない。
また被告は、内村健一は自らが中心となり、社団を成立させたと認め得るような外観を作り出したほか、被告に対し、昭和四七年七月四日付けで天下一家・第一相研名義の給与支払事務所等の開設届出書を提出するとともに従来の第一相研内村健一名義の給与支払事務所等が同四七年五月一九日付けで閉鎖された旨の届出書を提出し、同年同月二〇日以降の収益について天下一家・第一相研が人格なき社団として法人税確定申告書を提出しており、以上の点を考慮すると、人格なき社団という法的形態を利用した内村健一は、被告に対し天下一家・第一相研が人格なき社団ではないという論拠で既に生じた租税法上の責任の回避を主張することは、信義則、権利濫用の法理、禁反言の法理、法人格否認の法理の趣旨に照らして許されず、従つて、その破産管財人たる原告らが主張することもまた許されない旨主張する。
なるほど、内村健一が中心となつて被告主張のとおり人格なき社団の外形を作出し、税法上の各届出、所得税の申告などをしたことは弁論の全趣旨(原告らの主張)から認められ、右事実によれば内村健一が天下一家・第一相研が人格なき社団ではないと主張することは信義則等に照らして許されないとする被告の主張にも一理ないではないが(内村健一は天下一家・第一相研が人格なき社団ではないと主張しているわけではなく、もともとから人格なき社団である、と主張しているのであつて(このことは当裁判所に顕著である。)、この点を別に措いても)、原告らは内村健一の破産管財人であつて、破産債権者のため破産財団を充実増大させることをその職責とするものであり、破産管財人は一般に否認権を行使して破産者自身の行為を根底から覆すことさえできるのであるから、破産管財人たる原告らが破産者たる内村健一の従前の言動に反する行為をなしうるのは当然というべきである。
更には<証拠略>によれば内村健一に対する破産宣告も、無限連鎖講の主宰者は内村健一でなく、同人と別個に存在する人格なき社団たる第一相研あるいは天下一家・第一相研であるとの内村健一の主張を否定して決定されたものであることが認められ、右破産宣告と同時に選任された破産管財人である原告らが天下一家・第一相研の社団性を否定するのはその経緯上も当然であるというべきであり、被告の主張を採用することはできない。
四 以上の次第であつて原告らの請求は理由があるのでこれを認容し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 弘重一明 簔田孝行 丸地明子)
別紙(一) <略>
別紙(二)
前 文
天下一家の思想は、故西村展蔵先生の創始にかかる宇宙一体の生命論に立脚する平和思想であるが、その門下生であつた内村健一は、先生の薫陶に基づき、この思想を実現すべく、同志中谷正次郎の協力を得て、昭和四十二年三月第一相互経済研究所を設立し、ついで、天下一家の会を創立したものである。
両者は、まさに同体異名であり、友愛と信頼、親和の基盤に立つ真の福祉社会、相互が救け合い、常に明るい平和な社会、真理を貫く社会を実現せんとするものである。
爾来、心、和、救け合いの精神を基礎として、広く同志をつのり、諸施策の実現につとめてきたが、両者の団体としての実態を明確にし、より一層の発展を期するため、従来の綱領を整備し、本日、ここに天下一家の会・第一相互経済研究所定款を作成するものである。
天下一家の会・第一相互経済研究所 定款
第一章 総則
(名称)
第一条 この団体は、天下一家の会・第一相互経済研究所(以下本会という。)と称する。
(目的)
第二条 本会は、天下一家の会の思想である人類としての真理と生命を知り、心、和、救け合いの精神を家族の中に培い物心両面を以つて相互扶助し、人間性豊かな社会人を作り、平和な社会福祉を実現し国民として祖国愛を知らしめると共に、生命の尊厳、人類の幸せを自覚せしめ、世界の平和に貢献することを目的とする。
(事業)
第三条 本会は、前条の目的を達成するため次の事業を行なう。
(1) 天下一家の会の思想を普及するための活動
(2) 救け合いの精神に基づき相互扶助の実を挙げるための組織の立案並びにその育成
(3) 広く社会福祉を実現するための諸施策の実施
(4) 会員相互の友愛と信頼を深めるための保養施設の運営
(5) その他前条の目的を達成するために必要な事項
(本部の所在地)
第四条 本会は、本部を熊本市に置く。
(支部)
第五条 本会は、第三条に掲げる事業を行なうため、必要に応じて支部を設ける。
(公告)
第六条 本会の公告は、毎日新聞に掲載する。
第二章 会員
(資格)
第七条 本会の目的に賛同し、本会の立案育成する相互扶助の組織に加入したものを会員とする。
前項の組織に加入するにはその都度所定の申込書に入会金を添えて本会に提出するものとする。
会員となつた者は毎年一回以上同一組織に加入するものとする。
(資格の喪失)
第八条 本会の会員は、次の各号の一に該当する場合は、その資格を失なう。
(1) 会員が死亡したとき
(2) 会員から退会の申出があつたとき
(3) 会員が本会の定款の規定に違背したため除名されたとき
第三章 資産及び会計
(資産の種類)
第九条 本会の資産はこれを基本財産及び通常財産の二種とする。
基本財産は次に掲げるものとする。
(1) 別紙基本財産目録に記載された財産
(2) 基本財産とすることを指定して寄附された財産
(3) 理事会で基本財産に繰入れることを決議した財産
通常財産は基本財産以外の財産とする。
(資産の管理)
第一〇条 本会の資産は、会長が管理する。
管理方法は、理事会の決議によりこれを定める。
(基本財産の処分)
第一一条 本会の基本財産を処分しようとするときは会員総会の承認を要する。
(予算の議決、決算の承認)
第一二条 本会の歳入歳出予算は、年度開始前に理事会の決議を経て、会員総会の承認を受けなければならない。
歳入歳出決算は、年度終了後二ヶ月以内に、年度末現在の財産目録と共に監事の監査を経て、会員総会の承認をうけなければならない。
(会計年度)
第一三条 本会の会計年度は、毎年四月一日に始まり翌年三月三一日に終る。
第四章 会員総会
(会員総会の招集)
第一四条 本会の定時総会は、決算期より二ヶ月以内に招集する。
臨時総会は、必要ある場合に随時これを招集する。
(会員総会の構成)
第一五条 会員総会は、各支部において選出された会員代表によつて構成する。
会員代表の数は、各支部の会員の数に応じ、理事会において決定するものとする。
(議長)
第一六条 会員総会の議長は、会長がこれに当る。
会長に事故があるときは、副会長がこれに代り、副会長に事故があるときは、会員代表の中から選出された者がこれに当る。
(決議)
第一七条 会員総会の決議は会員代表の二分の一以上が出席して、その過半数をもつてこれを決する。
可否同数の場合は、議長がこれを決する。
(会員総会に附議すべき事項)
第一八条 次に掲げる事項は、会員総会に附議する。
(1) 基本財産の処分
(2) 歳入歳出予算及び歳入歳出決算の承認
(3) 定款の変更
(4) その他会長の附議する事項
第五章 役員及び理事会
(役員の種別及び員数)
第一九条 本会に次の役員を置く。
会長 一人
副会長 二人
理事 十五人以上 三〇人以内
監事 三人
(役員の選任)
第二〇条 本会の創始者内村健一は終身理事であり、会長となる理事のうち三分の一は会長の指名とし、その余の理事及び監事は、会員のなかから会員総会の決議により選任する。
副会長は理事の互選とする。
(役員の職務権限)
第二一条
会長は本会を統轄し、本会を代表する。
副会長は、会長を補佐して常務を処理する。会長に事故があるときは副会長がその職務を代理する。
理事は、理事会を組織し、会務の執行を決定する。
監事は、民法第五九条の職務を行なう。
(役員の任期)
第二二条
理事及び監事の任期は三年とする。
ただし、再任を妨げない。
補欠のため就任した役員の任期は、前任者の残任期間とする。
(資格喪失による退任)
第二三条 会員である理事又は監事が会員の資格を失つたときは、退任するものとする。
(顧問及び参与)
第二四条
本会に顧問及び参与若干名を置くことができる。
顧問及び参与は、理事会の推せんにより会長が委嘱する。
顧問及び参与は、重要な事項について、会長の諮問に応ずる。
(理事会に附議すべき事項)
第二五条 次に掲げる事項は、理事会に附議する。
(1) 事業計画
(2) 支部の設置
(3) 歳入歳出予算及び歳入歳出決算に関する議案
(4) 定款変更に関する議案
(5) その他会長の附議する事項
第六章 定款の変更
(定款の変更)
第二六条 この定款を変更するには、会員総会において会員代表の二分の一以上が出席してその三分の二以上の同意がなければならない。
第七章 附則
(施行細則)
第二七条 この定款の施行について必要な細則は、理事会の決議により、会長が定める。
(最初の会計年度)
第二八条 本会の第一回の会計年度は、本会発足の日より昭和四八年三月三一日までとする。
(最初の役員の任期)
第二九条 本定款の作成に関与した役員は、次に掲げる者とし、その任期は就任後第一回の定時会員総会の終結に至るまでとする。
(定款作成関与役員氏名省略)